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神戸地方裁判所 平成6年(行ウ)37号 判決

原告

亀田セイ

亀田佐一郎

右両名訴訟代理人弁護士

小杉茂雄

右両名訴訟復代理人弁護士

市瀬義文

被告

高砂市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

古田義博

右訴訟代理人弁護士

田中久雄

米田耕士

事実及び理由

第四 当裁判所の判断

一  争点1について

1  評価基準の違法性について

(一)  地方税法三八八条一項は、「自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」と規定し、地方税法四〇三条一項は、「市町村長は、第三百八十九条又は第七百四十三条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。」と規定している。

(二)  ところで、憲法九二条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定し、憲法九四条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定していることからすると、法律の範囲内で地方公共団体が条例を制定し実情に応じた課税を行うことを、憲法は予定しているというべきである。地方税法二条が「地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる。」と規定しているのは、右に述べたところを明らかにしたものと解される。したがって、地方税の賦課徴収について法律で定めることは、地方自治の本旨に反しない限り、憲法上容認されていると解され、同法三条が「地方団体は、その他方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。」と規定しているのも、法律の範囲内で条例を制定することができることを前提としているものと解すべきである。

そうすると、地方公共団体たる市町村の普通税の一つである固定資産税について、前記のとおり地方税法が市町村長に対し評価基準によって固定資産の価格を決定することを義務づけていることは、固定資産の評価について全国的な統一を図り、市町村間の均衡を保つ必要があると解されることに鑑みると、地方自治の本旨に反するということもできないから、評価基準を適用することが憲法九二条、九四条、地方税法二条、三条に違反するということはできない。

(三)  また、憲法八四条は、租税を課すには法律又は法律の定める条件によることを必要とする旨規定しているが、課税上基本的な重要事項は法律で定めたうえ、具体的・細目的な事項は命令などに委任することを許容していると解される。そうすると、地方税法三八八条一項は、前記のとおり固定資産評価基準の作成を自治大臣に委任しているものの、地方税法は固定資産税の課税要件の一つである課税標準について「適正な時価」と規定しており、地方税法三八八条一項は「適正な時価」の具体的・細目的・技術的な算定基準の作成を委任しているに過ぎないこと、固定資産評価基準の内容が相当程度に専門的技術的なものとならざるを得ないことを考え合わせると、評価基準を適用して評価することは、憲法八四条に違反するということはできない。

2  評価基準の合理性について

(一)  評価基準は、第一章第一節三において、「地上権、借地権等が設定されている土地については、これらの権利が設定されていない土地として評価するものとする。」と定めている。固定資産税は、固定資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産から生ずる現実の収益に着目して課税される収益税とは異なるものであるから、固定資産が土地である場合において、所有者が現実に収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、その更地価格に着目して「適正な時価」の評価を行うことには、十分合理性があるというべきである。したがって、評価基準において「適正な時価」の評価を行う際に売買実例価額を中心として評価し、借地権価格や底地価格を考慮しないこととしても、それを不合理ということはできない。

(二)  評価基準の土地の評価の方法の概略をみると、個々の土地すべてについて鑑定評価を実施する方法ではなく、標準的な土地について鑑定評価を行って価格を求め、他の土地については、標準的な土地と諸条件を比較した結果に照らして標準的な土地の右価格を補正して評価を行うという手法を採用している。

土地の適正な時価の算定をするにあたり、原告らが主張するように個々の土地について個別的、具体的に鑑定評価をすれば、右手法による算定より正確な算定が可能ではある。しかし、土地は全国に多数存在するのであり、これらについて、個別的にそれぞれ一定の時間的財政的人的制約の中で価格の鑑定評価を実施することが困難であることは明らかであるから、右のような評価基準が採用している手法は、右困難を解消しつつ、多数の土地について公平かつ統一的に適正な評価を実施しようとするものとして合理的であり、地方税法により許容されているというべきである。

(三)  原告らは、道路状況、地形等を考慮してなされる補正が、土地の面積等をほとんど考慮にいれずなされていることは不適切である旨主張しているが、評価基準は、道路状況、地形等が価格形成に影響を与える要因と捉え、これらによる増減を行っているのであって、それ自体不合理とはいえず、土地の面積を常に各種補正において考慮しなければならない理由も見出しがたいから、原告らの右主張は採用できない。

(四)  以上に加えて、評価基準の土地の評価方法のその他の点についても、土地を評価する基準・方法として合理性を欠くというべきものは見当たらないから、右評価方法は、「適正な時価」を算定する方法として一般的に合理性を有するということができる。

3  以上のとおりであるから、争点1に関する原告らの主張は採用できない。

二  争点2について

1  本件各土地(一)(二)の評価方法

〔証拠略〕によれば、以下の事実を認めることができる。

(一)  高砂市長は、別紙物件目録(一)<1>から<3>の各土地、別紙物件目録(二)<2>から<9>の各土地について、評価基準が定める市街地宅地評価法に基づき、別紙物件目録(一)<5>、<6>、<11>から<14>の各土地について、評価基準が定めるその他の宅地評価法に基づき、別紙物件目録(一)<4>、<7>から<10>の各土地、別紙物件目録(二)<14>、<16>から<25>の各土地について、評価基準が定める雑種地の評価法に基づき、別紙物件目録(二)<1>、<11>から<13>、<15>の各土地について、評価基準が定める市街化区域農地の評価法に基づき、別紙物件目録(二)<10>の土地について、廃塩田の評価法として、評価基準が定める雑種地の評価法に準じて、それぞれ評価を行い、本件各土地(一)(二)の価格を別紙物件目録(一)(二)の市長決定価格欄記載のとおり決定した。

(二)  被告は、別紙物件目録(一)<5>、<6>、<11>から<14>の各土地について現状調査をした結果、評価基準にそって市長が定める高低差による補正率〇・九〇を適用するのが妥当であるとして、右各土地については別紙物件目録(一)の各審査決定価格欄のとおりの価格を決定し、その他の土地については、高砂市長の評価が適切又は不適切な部分があっても評価額を減額すべき要素は見当たらないとして、高砂市長の評価額と同額の価格を決定した。

2  本件各登録価格の評価方法について

(一)  原告らは、本件各登録価格の評価方法に違法な点があると主張しているので、この点について、以下検討する。

(1) 本件通達に依拠して評価したことについて

〔証拠略〕によれば、本件通達は、宅地の固定資産評価にあたっては、地価公示法(昭和四四年法律第四九号)による地価公示価格、国土利用計画法施行令(昭和四九年政令第三八七号)による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格(以下、これらの価格を併せて「地価公示価格等」という。)を活用することとし、これらの価格の一定割合(当分の間この割合を七割程度とする。)を目途とすること等を内容とするものであり、本件通達は評価基準と一体のものとして扱われ、本件各登録価格もこれらに依拠して決定されたことが認められる。

ところで、本件各登録価格が本件通達に依拠して決定され、その結果従前に比べ税負担が増大したとしても、本件通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである限り、本件各登録価格の決定は法の根拠に基づくものとして適法であると解される。

固定資産税の課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(地方税法三四一条五号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格をいうが、地価公示価格等は右取引価格の算定を目的として土地の評価を行った結果の価格であることからすると、固定資産の評価にあたり地価公示価格等を活用することは法の趣旨に合致するものである。そして、土地の取引価格には幅があるためある程度控えめに評価する必要性は否定できず、価格調査基準日から基準年度の賦課期日の間に地価が下落する可能性がある(価格調査基準日を基準年度の賦課期日からさかのぼった時点とすることの適法性については後に述べるとおりである)ことに鑑みると、地価公示価格等の七割程度を目途として土地の評価を行うことには合理性がある。これらの点を考え合わせると、本件通達の内容は、地方税法の正しい解釈の範囲内にあるというべきであり、本件各土地(一)(二)の評価を行うにあたって本件通達に依拠したことには何ら違法とすべき点はない。

(2) 平成四年七月一日を価格調査基準日とし、平成五年一月一日までの時点修正しかしていないことについて

〔証拠略〕によれば、高砂市長及び被告は、本件各土地(一)(二)について、平成四年七月一日を価格調査基準日として標準宅地について鑑定評価価格を求め、これに平成五年一月一日までの地価動向を勘案した時点修正を行って算出した価格を基に評価を行っていることが認められる。

ところで、地方税法三四九条一項は、土地課税台帳等に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているから、右登録価格を算定すべき基準日は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日であると解され、これを本件についてみると、平成六年一月一日における「適正な時価」をもって登録価格とすべきであるということになる。そうすると、平成六年一月一日時点における「適正な時価」の算出方法として、平成六年一月一日時点における標準宅地の鑑定評価価格を基に算出する方法が、最も望ましいということができる。

しかしながら、地方税法四一〇条は、市町村長の価格決定を賦課期日の約二か月後に当たる二月末日までに行うべきものとしており、多数の固定資産について、市町村が評価基準に基づき評価を行った後、都道府県間及び各都道府県内の市町村間の評価の均衡を図るなどの評価事務を約二か月の間にすべて行うことは困難であると考えられることに鑑みると、賦課期日から評価事務に要する相当な期間をさかのぼった時点を価格調査の基準日として行うこと自体は、地方税法及び評価基準が許容しているところと考えられる。そして、本件評価において、平成五年一月一日の時点以降の時点修正は行われていないが、平成六年一月一日までの時点修正を要するとすれば、前記と同様の評価事務処理上の困難が生ずることからすると、地価動向を勘案した時点修正を平成五年一月一日までとすることについても、地方税法及び評価基準が禁止しているとまではいえず何ら違法はないというべきである。

(3) 本件土地(一)<4>の評価について

本件土地(一)<4>に私道部分が含まれていることを認めるに足りる証拠はないから、この点に関する原告らの主張(3)はその前提において失当である。

(4) 本件土地(二)<1>、<11>から<13>及び<15>の各土地の評価について

〔証拠略〕によれば、別紙物件目録(二)<1>、<11>から<13>及び<15>の各土地について、造成費相当額として一平方メートル当たりの評点数から一定の評点数を控除していることが認められる。

造成費は、当該土地の価格に必ずしも相関するものではないと考えられるから、造成費相当額の控除の方法として評点数の一定割合を控除する方法(この方法によれば価額の高い土地ほど控除される評点数の値は大きくなる)を採らずに一平方メートル当たりに一定の評点数を控除する方法を採用していることを不合理ということはできない。

(5) 別紙物件目録(二)<10>の土地の評価について

評価基準において、造成費相当額を控除することとされているのは、地方税法附則第一九条の二第一項に規定する市街化区域農地など、宅地等としての潜在的価値を有し、売買価額も宅地等の価格に準じた水準にあると考えられるが宅地等とするには土盛り整地等をしなければならない田、畑についてである。そうすると、後記種本鑑定によると、別紙物件目録(二)(10)の土地は廃塩田であり、現況は溜池の水面下に位置していることが認められるのであって、かかる土地につき造成費相当分を控除していないからといって不合理であるということはできない。また、比準宅地の評点数に個別的要因による補正率として〇・三一五を乗ずる方法で評価を行っていることも、評価基準の定めに何ら反するものではないから、不合理ということはできない。

(二)  以上のとおり、本件各登録価格の評価方法には、原告らが主張するような不合理、違法な点は存しない。そうすると、本件各登録価格は、「適正な時価」を算定する方法として一般的に合理性を有すると認められる評価基準に定められた評価方法に従って適切に算出されたものということができ、格別の反証のない限り、本件各登録価格に「適正な時価」を上回る違法はないと推認されるというべきである。

(三)  鑑定人種本育生の鑑定の結果(以下「種本鑑定」という。)について

(1) 原告らは、本件各登録価格は、種本鑑定による本件各土地(一)(二)の平成六年一月一日現在の鑑定評価額(以下、併せて「本件各鑑定価格」という。)の七割の価額を上回るから、違法である旨主張するが、原告らの右主張は、種本鑑定の結果を前記(二)の反証としているものと位置付けることができる。

(2) 種本鑑定による本件各土地(一)(二)の鑑定価格は、別紙物件目録(一)(二)の各種本鑑定価格欄のとおりである(なお、種本鑑定の中には、複数の土地を一体として評価して鑑定価格を算出しているものがあるが、それについては、各土地に関する鑑定書中の一平方メートル当たりの鑑定評価額に当該土地の地積を乗じたものを、各土地の鑑定価格とした)。そして、別紙物件目録(一)(二)の本件各登録価格と本件各鑑定価格の比較をすると、別紙物件目録(二)<1>の土地(以下「本件土地(二)<1>」という。)を除いた土地については、鑑定価格が登録価格を上回っていると認められるから、右上回っている土地に関する種本鑑定の結果は、反証たり得ないというべきである。

なお、原告らは、本件各鑑定価格の七割と本件各登録価絡との比較の結果を主張しているが、本件通達が七割程度の評価を行うこととしている趣旨は前記二2(一)(1)のとおりであり、種本鑑定も本件各土地(一)(二)の正常価格の算定を目的としたものであるから、本件各登録価格が本件各鑑定価格の七割を上回っているか否かを問題にすること自体失当といわざるを得ない。

(3) そこで、本件土地(二)<1>に関する種本鑑定の結果が、反証たり得るか否かについて検討することとする。

種本鑑定の結果によれば、本件土地(二)<1>について、一平方メートル当たり二一万円をもって標準価格とし、個別的要因として、小規模(過少)地積を理由に五〇パーセント減、筆界確認のための必要費用性等を理由に三五パーセント減、現在の併合利用者等との間にて賃貸借契約の合意を得ることが可能と仮定して生じる地代等の徴求権利を理由に五パーセント増とした結果の差し引き合計八〇パーセント減を右標準価格に対してした結果に本件土地(二)<1>の地積を乗じて得られた一三万八六〇〇円を、鑑定価格としていることが認められる。

右鑑定の合理性について検討すると、種本鑑定の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件土地(二)<1>を確定できなかったため当初は鑑定の対象とされなかったが、被告提出の資料及び被告の担当者の現地案内に基づき本件土地(二)<1>の範囲を建物の敷地の一部であると確定したうえで鑑定を行ったことが認められる。右認定のような本件土地(二)<1>の鑑定に至る経緯に鑑みると、本件土地の境界の確定は必ずしも容易ではないということはできる。しかしながら、前記のような固定資産の所有という事実に着目して課税するという固定資産税の性格及び境界の確定が容易でないからといって境界確認のための費用を要するとは限らないこと、右土地は地積がわずか三・三平方メートルであるにすぎないこと等に鑑みると、筆界確認の費用相当分を控除する必然性があるとは考えられず、筆界確認のための費用の必要性等を理由に三五パーセント減額していることに十分な合理性を認めがたい。そうすると、前記標準価格二一万円に対する個別的要因に係る補正は八〇パーセントから三五パーセントを差し引いた四五パーセント減とすべきであり、その結果は、以下の計算式のとおり、三八万一一五〇円となる。そして、右価格は本件土地(二)<1>の登録価格を上回ることとなるから、種本鑑定は、本件土地(二)<1>についても反証たり得ないというべきである。

(計算式) 二一万円×(一・〇〇-〇・四五)×三・三平方メートル=三八万一一五〇円(>三四万一二二〇円(登録価格))

3  まとめ

以上のとおりであるから、本件各登録価格は公平かつ統一的に「適正な時価」を算定する方法として合理性を有する評価基準に基づき算出されたものであるから、右価格は「適正な時価」を超えることはないと推認され、他方右価格が「適正な時価」を超えるものであるとの反証もないから、本件各価格決定及び本件各棄却決定に本件各土地(一)(二)の「適正な時価」を超える価格を認定した違法があるということはできない。

三  争点3について

〔証拠略〕によれば、原告らは、被告に対し、本件各審査申出の審理方式として書面審理の手続による審査を申請していることが認められる。地方税法四三三条は、審査申出人から口頭審理の手続による審査の申請があった場合には、特別の事情がある場合を除き、口頭審理の手続によらなければならない旨規定しているにすぎないから、被告が、本件各審査申出に対し口頭審理手続ではなく書面審理手続で審理を行ったことは適法である。

また、前記争いのない事実によれば、被告が本件各審査申出に対する決定を行うまでの期間が地方税法四三三条一項に定められた審査決定のための期限(審査の申出をした日から三〇日)を超えていることが認められるが、地方税法四三三条八項が右期限内に決定がない場合には、却下する旨の決定があったものとみなすことができる旨規定していることからすると、右期限の超過をもって本件各決定に取り消すべき違法があるということはできないと解される。

四  結論

以上の次第であるから、本件各価格決定及び本件各棄却決定は適法であって、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 徳田園恵 西野吾一)

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